「人に頼る」という行為。
甘えと感じる人もいるでしょう。
しかし、人に頼るためには自分の弱さを認める必要があり、実はとっても勇気のいることなんです。
球界のレジェンドである野村克也氏(以下ノムさん)に教えられました。
かつて孤独だったノムさんはサッチーこと沙知代氏と出会い、やがて結婚して「ふたり」になります。破天荒ながらも自分に正直に生きたサッチーと歩んできました。そして2017年12月8日。サッチーに先立たれ、ふたたび「ひとり」になった心境を書いています。
サッチーについて語っている本ですが、隙あらば野球を話題に絡めてくるあたりはさすがノムさん。サッチーとの馴れ初めや、ノムさんを支えた「なんとかなるわよ」の精神についても語っていて、サッチーの豪傑っぷりも感じることができます。
サッチーは「死ぬまで働け」が信条の人で、ノムさんにとってもそれが今でも心の支えになっているそうです。
「毎日元気で仕事に精を出して、最後はスパッとこの世とおさらばしましょう。あの世はきっといいところよ。帰ってきた人はいないんだから」
グラウンドを離れてからも私がボケなかったのは、沙知代のおかげだったのかもしれない。
p84より引用
ノムさんとサッチー。あまりに特殊すぎる夫婦の話ですが、一般的な夫婦関係においてのヒントもたくさん見つけることができる一冊です。
その中でも特に「自分の弱さ」を認めることが大切だという話が響きました。
自分の弱さを認める勇気
年齢を重ね、色々なことができるようになってくるとあらゆることに対して「自分でやってしまう方が早いし楽だ」と考えるようになってきます。それなりにプライドも持つようになります。もちろんそれは悪いことではありません。
「人に頼ることは恥ずかしいことだ」
周りに迷惑をかけたくないと考えている誠実な人は意外に多いように感じます。
息苦しいこの世の中。周りを頼るということがもう少しカジュアルにできればいいのにな。と感じます。
ノムさんも本著でこのように語っています。
「自分は弱い」ということを自覚し、認め、受け入れれば、自分でできること、できないことが明確になる。できることは自分でやればいいし、できないことは誰かに頼めばいい。歳をとればいろいろなことができなくなるのは当然なのだから、恥ずかしいことではないし、恐縮する必要もない。
p39より引用
野村克也という男の強みは「自分の弱さ」を認める勇気です。
現役時代は平凡な身体能力(それでも相当なものですが)を補うために、とにかく頭を使って創意工夫。配球を読むという考え方やクイックモーションを生み出したとも言われています。
「野球は頭脳のスポーツ」というイメージを創り出したのもノムさんの功績によるところが大きいでしょう。
監督時代も決して強いとはいえないチームを引き受けながらも、通算成績では1565勝1563敗と勝ち越しています。
いつでもノムさんは「自分の弱さ」を自覚して、「自分にできること」に集中してきました。
「ひとりでなんでもできるよ」
という考えも立派ですが、ひとりではいずれ限界がきます。
自分のできる・できないを理解し、できないことは人に頼る。できることに集中できれば、より爽快に生きられるはずです。
野村 ➖ 沙知代 = ゼロ
「ひとり」になったノムさんですが、本著によってサッチーがノムさんの中に「生きている」というのがよくわかります。
寂しくないわけではないのですが、いちど「ふたり」になった人間はただの「ひとり」ではないということも感じさせてくれます。
キャッチャーはピッチャー がいなければ、何もできない。ゼロだ。「野村−野球=ゼロ」と私はいつも口にしているが、野村から沙知代を引いても、その差は「ゼロ」だったと改めて思う。
はたして、彼女はどう感じていたのか。
「おれと結婚して、幸せだったか?」
あの世にいったら、訊ねたいと思っている。
p92より引用
これはノムさんベタ惚れですわ。
夫婦っていいね。
本日はこれにて。
ありがとうございました。