野球におけるジエンゴ(自援護)の概念をご存知でしょうか?
「ピッチャーがヒットを打つとチームが盛り上がる」というようなジンクスがよく言われます。
果たしてそれが本当なのか検証したところ、ジエンゴは一定の効果がありそうということがわかりました。
ジエンゴ(自援護)とは?
読んで字のごとくピッチャーがヒットを打つことによって自らを援護するさまを表します。
古くは堀内恒夫がノーヒットノーランを達成した試合で3本のホームランを記録したり、記憶に新しいところでは1番ピッチャーとして出場した大谷翔平が初回先頭打者ホームランを打ち、そのままピッチャーとして勝利をあげるなど、一流の投手はバッティングも一流ということが言われています。
ジエンゴのメリット・デメリット
ホームランとまではいかなくても、ピッチャーが自らヒットやタイムリーを打つことはチームにとっていくつかメリットがあります。その中で最大のメリットは相手ピッチャーのリズムを崩すことができる点ではないでしょうか?
打つ確率の低いピッチャーでその回が終わるはずだったのに、出塁率の高い1番バッターに打順が回ってしまうのは投げる側にとってはプレッシャーとなります。
また「ピッチャーにだけは打たれてはいけない」という心理状態でピッチャーにタイムリーを打たれてしまうと、精神的ショックも大きいと考えられます。
一方でデメリットとしては出塁して、ランナーとして走塁面での負担がかかることでピッチングに影響を及ぼすリスクもあげられます。そのリスクを避けるためピッチャーが無抵抗で三振する場面もよく見られますね。
「結局のところジエンゴは意味があるの?」
そんな疑問が出てきたため、2019年シーズンの5/7までに行われたセリーグの101試合を調べました。
ピッチャーがヒットを打った試合、つまりジエンゴがあった試合がどのような結果になっているのか?
みごと勝ち投手になっているのか?
せめてチームは勝っているのか?
それとも悲しい結末が待っているのか?
ジエンゴの結末をみていきましょう。
ジエンゴの結末はいかに?
5/7終了時点までのセリーグ101試合中33試合でジエンゴが行われていました。
*ヒットは出てないですが、4/24に広島カープの野村祐輔選手がスクイズで1打点をあげていましたので、これもジエンゴとして扱うことにします。
結果表記は以下のとおりです。
☆・・・自身が勝ち投手になった
◯・・・チームは勝利した
◉・・・チームは敗北した
★・・・自身が負け投手になった
【2019/5/7時点までのジエンゴ一覧】
3/29 今永 昇太 (De) vs中 ☆
3/30 ヤングマン (巨) vs広 ☆
3/31 畠 世周 (巨) vs広 ◯
4/2 原 樹里 (ヤ) vsDe ◯ *2安打
4/4 浜地 真澄 (神) vs巨 ★
4/5 笠原 祥太郎 (中) vsヤ ◉
4/5 小川 泰弘 (ヤ) vs中 ◯ *1打点
4/5 大瀬良 大地 (広) vs神 ★
4/6 石川 雅規 (ヤ) vs中 ◯
4/9 ガルシア (神) vsDe ◯
4/9 原 樹里 (ヤ) vs広 ☆
4/11 大貫 晋一 (De) vs神 ☆
4/12 菅野 智之 (巨) vsヤ ☆
4/12 今永 昇太 (De) vs広 ☆ *完封
4/13 ヤングマン (巨) vsヤ ◉
4/13 柳 裕也 (中) vs神 ☆ *2安打
4/14 高橋 奎二 (ヤ) vs巨 ◯
4/14 西 勇輝 (神) vs中 ☆ *2打点
4/16 原 樹里 (ヤ) vs神 ☆
4/17 山井 大介 (中) vsDe ☆
4/19 今永 昇太 (De) vs広 ◉
4/20 井納 翔一 (De) vs広 ◉
4/24 高橋 優貴 (巨) vsヤ ☆
4/24 野村 祐輔 (広) vs中 ☆
*ヒットはないがスクイズによる1打点
4/24 山井 大介 (中) vs広 ★
4/27 又吉 克樹 (中) vs神 ☆
*リリーフ登板
4/28 今村信貴 (巨) vsDe ☆
4/29 九里亜蓮 (広) vsヤ ★
4/30 原 樹里 (ヤ) vsDe ◯ *1打点
5/2 スアレス (ヤ) vsDe ★
5/3 小川 泰弘 (ヤ) vs中 ☆
5/3 メルセデス (巨) vs広 ◉
5/5 阿知羅 拓馬(中) vsヤ ☆*1打点
結論:ジエンゴは大事
ジエンゴのあった33試合のうち
勝ち 23試合(☆16◯7)
負け 10試合(★5◉5)
という結果になりました。
ジエンゴがあった試合ではチームにとってポジティブな結果になる確率が高いと言えますね。
とくに*印の部分のように打点をあげたり、2安打した試合では全てチームの勝ちになっています。ピッチャーがバッティングで結果を出すことがチームに良い影響を与えています。
【球団別ジエンゴ試合数と内訳】
ヤ 9(☆3◯5◉0★1)
巨 7(☆4◯1◉2★0)
中 6(☆4◯0◉1★1)
De 5(☆3◯0◉2★0)
神 3(☆1◯1◉0★1)
広 3(☆1◯0◉0★2)
☆・・・自身が勝ち投手になった
◯・・・チームは勝利した
◉・・・チームは敗北した
★・・・自身が負け投手になった
球団別では東京ヤクルトが9試合で1位となりましたが、そのうち5試合が原樹理選手によるものです。ちなみに5/7時点での打率/OPSは.357/.866でした。これはもはや二刀流といってさしつかえないのでは、、?
われらがドラゴンズはピッチャーの打撃が悪いイメージがあったんですが、それなりに打っているみたいです。勝ち投手になる確率は高いので、ピッチャーはみんな山井大介さんや松坂大輔さんにバッティングの教えを乞おう。(提案)
今回は2019シーズン途中までの集計となりましたが、シーズン終了時や過去シーズンのものも機会があれば調べてみます。
おわりに
この記事を書くきっかけとなったのは、贔屓球団である中日ドラゴンズの開幕戦3/29の試合でした。
対戦相手の横浜DeNAベイスターズ先発・今永昇太選手にまさにジエンゴを見せつけられた試合となったのです。
野手顔負けの粘りからのヒットでチャンスメイク。その後、先制点を取られドラゴンズはそのまま敗北しました。
この打席では今永選手の勝ちたい気持ちがとてもわかりやすく表れており、敵ながらも一瞬「勝たせてあげたい」と思ったことを覚えています。
そしてヒットを打たれたときになんだか流れを掴まれた感覚があったんですよね。「あ、これ負けるやつだ」と。
現地観戦にいくとわかるんですが、贔屓チームのピッチャーがヒット打つとめちゃくちゃ盛り上がります。反対に打たれるととっても不穏なムードになります。
「まさかアイツは打つとは」というのは野球の醍醐味でもあるので、ピッチャーのバッティングにも注目してみると楽しいですよ。
ピッチャーは投げるのが本業とはいえ、ジエンゴの効果はそれなりにありそうなので勝ちたいピッチャー(とくにドラゴンズ )はバッティングにも意識を向けてみるといいかもしれません。
本日はこれにて。
ありがとうございました。